2019年11月から2020年2月のプレスリリースと論文ニュースからご紹介します。

細胞の中にある複雑なゲノムDNAの構造様式の特徴

機械学習によるゲノム構造の特徴抽出

2020年02月03日

ヴィピン・クマーリサーチアソシエイト、谷口雄一ユニットリーダー(細胞システム制御学研究ユニット)らは、細胞の中にある複雑なゲノムDNAの構造様式の特徴を機械学習により抽出し、ゲノムを構成する新たな階層構造を発見しました。 続きを読む

Kumar V, Leclerc S, Taniguchi Y. Nucleic Acids Res 48, e26 (2020)


重なり合うNMR信号を分離し、タンパク質の構造や動きなどに関する情報を得る模式図

タンパク質の構造や動きを解析する新技術を開発

2020年01月31日

葛西卓磨研究員、木川隆則チームリーダー(細胞構造生物学研究チーム)らは、核磁気共鳴(NMR)法に情報・数理科学の手法を応用することで、従来は解析が困難だった重なり合うNMR信号を分離し、タンパク質の構造や動きなどに関する情報を得る新たな方法を開発しました。 続きを読む

Kasai T, Ono S, Koshiba S, et al. J Biomol NMR 74, 125 (2020)


種々の主成分解析によるクラスタリングの比較

大規模データに対する主成分分析の性能を評価

2020年01月20日

1細胞RNAシーケンス法では得られたデータを主成分分析(PCA)と呼ばれる統計手法で簡素化し、臓器に含まれる細胞の種類や数、機能を特定しますが、細胞の数が膨大な大規模研究では、膨大な計算時間、メモリ量が必要とされます。

露崎弘毅特別研究員、二階堂愛チームリーダー(バイオインフォマティクス研究開発チーム)らは、10種のPCAアルゴリズムを比較し、性能評価を行いました。さらにデータ形式やデータの読み込み方も考慮したソフトウェアを実装し、大規模研究での有効性を示しました。 続きを読む

Tsuyuzaki K, Sato H, Sato K, Nikaido I. Genome Biol 21, 9 (2020)


哺乳類と鳥類の左右非対称性メカニズムの違い

2020年01月09日

動物の体の内部のつくりが左右非対称となる仕組みは興味深い謎です。マウスでは胚発生の初期段階で特定の細胞が持つ繊毛(せんもう)が回転運動し、左向きの水流を生じ、対称性を破ると考えられています。

濱田博司チームリーダー、梶川絵理子テクニカルスタッフ(個体パターニング研究チーム)、工樂樹洋チームリーダー(分子配列比較解析チーム)らは、爬虫類ソメワケササクレヤモリ(トップ画像)などを用いて調べたところ、鳥類と爬虫類には動く繊毛は存在せず、遺伝子発現の空間的偏りが左右非対称性を生みだしていることを解明しました。 続きを読む

Kajikawa E, Horo U, Ide T, et al. Nat Ecol Evol 4, 261 (2020)


微小レンズの計測値

吹きガラスの原理でガラス製微小レンズを作製

2019年12月27日

透明な微小レンズは医療向け分析検査デバイスの素子として、あるいはスマートフォンのカメラやセンサーモジュールとして応用されています。

田中陽チームリーダー、アイサン・ユスフ大学院生リサーチ・アソシエイト、ヤリクン・ヤシャイラ客員研究員(集積バイオデバイス研究チーム)らは、ガラス加工分野では数百年来用いられてきた伝統技術である吹きガラス製法をマイクロスケール加工に利用することにより、さまざまな形のガラス微小ドーム構造を、高精度で短時間かつ簡便に大量生産できることを実証しました。 続きを読む

Aishan Y, Yalikun Y, Amaya S, et al. Appl Phys Lett 115, 263501 (2019)


MI-IP法による2種のベータ線放出核種の計測

複数のプローブを同時に画像化する「MI-IP」を開発

2019年12月27日

ごく微量の放射性核種の分布や移動などを画像化できるベータ線イメージングは、PET検査による全身撮像後の組織切片観察や、植物内の低分子やミネラルの動態解析などに力を発揮します。しかし、これまでの装置は複数のベータ線放出核種を同時に画像化することはできませんでした。

福地知則研究員、渡辺恭良チームリーダー(健康・病態科学研究チーム)らは、ベータ線イメージング装置にガンマ線を捉える検出器を組み込むことで、複数の元素を同時に解析できる新装置「MI-IP」を開発しました。 続きを読む

Fukuchi T, Yamamoto S, Kataoka J, et al. Med Phys 47, 587 (2019)


ひしめく神経幹細胞

神経幹細胞の再生能を発見

2019年12月24日

発生途中の脳組織には内部から表面に向かって放射状に伸びた細長い柱状の幹細胞が無数にひしめき合っています。

藤田生水研究員、下向敦範専門職研究員、松崎文雄チームリーダー(非対称細胞分裂研究チーム)らは、マウス胎児脳の神経幹細胞の形状変化を鮮明に捉えることに成功し、増殖期の神経幹細胞には柱状の形態を柔軟に再生する能力のあることを発見しました。しかし、脳発生後期になるとこの能力は失われ、新たな幹細胞層が出現します。このタイミングが高等哺乳類で脳が拡大する時期を決めることが明らかになりました。 続きを読む

Fujita I, Shitamukai A, Kusumoto F, et al. Nat Cell Biol 22, 26 (2020)


透明化マウス脳全細胞解析

臓器内の全細胞を調べる革新技術

2019年12月13日

上田泰己チームリーダー、松本桂彦研究員、三谷智樹研究生、堀口修平研修生(合成生物学研究チーム)らは、組織透明化技術「CUBIC」と、新たに開発した高速イメージング技術「MOVIE」と高速データ解析技術を組み合わせ、透明化した臓器内の全ての細胞を高速で解析する「全細胞解析」を実用化しました。これを用いてマウスの脳を構成する細胞が約1億個あることを明らかにし、それら全ての細胞の位置を同定することに成功しました。続きを読む

Matsumoto K, Mitani TT, Horiguchi SA, et al. Nat Protoc 14, 3506 (2019)


DNAバーコーディングによるタンパク質のデジタル定量法

2019年11月29日

理研生命医科学研究センターと城口克之チームリーダー(細胞システム動態予測研究チーム)らの共同研究グループは、新しいタンパク質標識法である「タンパク質-DNA複合体作製法(ハロタグタンパク質バーコーディング法)」を開発し、次世代シーケンサーを用いたタンパク質の定量に成功しました。 続きを読む

Yazaki J, Kawashima Y, Ogawa T, et al. Nucleic Acids Res 48, e8 (2020)


DNAオリガミにつなげたミオシン分子

DNAオリガミ技術で筋収縮の原理を解明

2019年11月27日

藤田恵介基礎科学特別研究員、大町優史研究員、岩城光宏副チームリーダー、柳田敏雄チームリーダー(細胞動態計測研究チーム)らは、DNAオリガミ技術(DNAを材料にして折り紙のように折りたたむことで、思い通りの2次元または3次元のナノ構造物を作り上げる技術)を利用して筋収縮の機能単位であるサルコメア構造を再構成し、筋肉収縮の際に働くモーター分子の動態を直接観察することに成功しました。 続きを読む

Fujita K, Ohmachi M, Ikezaki K, et al. Commun Biol 2, 437 (2019)


9種のハエのサイズの比較

サイズ進化の法則を発見

2019年11月25日

廣中謙一客員研究員、西村隆史チームリーダー(研究当時、成長シグナル研究チーム)らは、昆虫の種によって異なる体の最終サイズを決める重要な要因が、「性成熟の開始に必要な最低の大きさ(臨界サイズ)」であることを明らかにしました。 続きを読む

Hironaka KI, Fujimoto K, Nishimura T. iScience 20, 348 (2019)