廣島 通夫(細胞シグナル動態研究チーム 上級研究員)

✕ 兵庫県立柏原高等学校 理科部

どんな人にインタビューしたいかを話し合ったとき、私たちはAIと生物を扱って研究をしている人にお話を聞きたいと思い、細胞シグナル動態研究チームの上級研究員である廣島通夫さんにお話を伺うことにしました。廣島さんは細胞の分子を観察することによって、裏にある現象やメカニズムを探り、分子が細胞応答をどのように調節しているかを研究しています。計算技術やロボットとAIを使って研究を自動化することで、細胞の中の分子を1分子感度でたくさん見ることができるようにし、分子から見た細胞形成のしくみや、分子のはたらきの理解を目指した新しい研究手法の開発を目指しています。

廣島研究員
廣島通夫(ひろしま・みちお)神戸市出身。大阪大学で博士号取得後、国立遺伝学研究所を経て理化学研究所に移り、2012年より現職。現在は理研BDRにて、細胞内1分子全自動観察システム「AiSIS」の開発に携わるほか、細胞内の情報伝達を1分子感度で明らかにするべく研究を進めている。

なぜ分子を観察する研究をしようと思ったのですか?

分子は、自分ではものを見ることも音を聞くこともできない存在ですが、いろいろな分子同士が相互作用することで秩序あるものができ、その結果細胞ができています。単なる溶液の中で浮かんでいる分子がどういった情報処理をしているのか、その機能的なメカニズムを知りたいと思っています。また、空間の中にある分子は、空間の状況がある程度条件を満たしていないと反応を起こさず、細胞もできません。そういった分子と空間の関わりや、その関わりの結果、生命がどのように進化したのか、つまり、生命の根源を分子の面から知りたいと思っています。

研究の上で大切にしていることは何ですか?

まず、粘り強くということです。今やっている研究では特に、1回目の実験で良い結果が出ても2回目、3回目と繰り返すと思うようにいかなかったりするので、はっきりするまで、自分が納得するまでやり続けることですね。

また、仮説を立てて研究すると、仮説と違う結果が出ることもあります。そういうときに仮説通りの結果が出るまでやるのではなく、柔軟に考え、考え方や方法を変えることも大切です。

つまり、どこまで粘り強く、どこから柔軟にやるかのメリハリが大事です。そして、物事を考え続けること、次どういう実験をするかなどたくさんのことを考える必要があります。

AIやディープラーニングとはどのようなものですか?

AIとはコンピューターで人のような知能を再現するものです。AIは時代とともに意味するところが変わってきていますが、現代では主に、コンピューター自身が学習する機械学習の一つであるディープラーニングを指すことが多いようです。ディープラーニングは脳のシステムを模して、多数の入力を受けて1つの出力を出す人工ニューロンで構成されます。ニューロンは受け取る情報に「重み」をつけてまとめ、相手に送ります。学習の中で自分で「重み」を変えていって、最も良い結果が出力されるようにサイクルを繰り返しています。

顕微鏡を体験する高校生たち

将来AIが研究の大部分を占める状況はあると思いますか?

AIは人間の思考パターンであるニューラルネットワークを模して作っているので、人間がやれることはAIができるようになります。感情とかでぶれたりしないので高い精度で物事を判断してくれます。今までの論文を教え込ませることで、これから必要とされるテーマは何かを考え、AIが自分で研究テーマを設定して必要な実験は何かを決定することができるかもしれません。そこから得られた結果をこれまでの知識に基づいて解析するということは、十分考えられます。

ただし、あくまで人間にとって何かをするときの手段としてとらえることが大事だと思います。

これからどう変わっていくかは皆さんの目で判断してほしいです。未来のことだから難しいですが、人間の研究者は、AIでは思いつかないようなアイデアを出す役割以外何もしなくてよくなる可能性もあります。

行き詰まった時どうしますか?

気分転換に逃げる時もありますけど、どちらかと言うとやっぱりずっと考える方になってしまいますね。新しいやり方や新しい考えで乗り越えられることもあるので、やっぱりある程度は集中して考えるのが一番いいんじゃないでしょうか。それでもダメな時はきっぱりそこで中断して、それで時間がたった時にもう一度考えるとか。そういうことは日常茶飯事ですけど、考え続けるのが一番効果的かな。

アイデアはどんな時に思いつきますか?

詰めて考えているときはあまり良いアイデアは浮かんできません。ときどきリラックスするなどのメリハリが大事。基本的には好きでやっていることだから、研究に関して考えていることが多いのですが、だからこそリラックスしているとアイデアが浮かびます。

高校生のときにやっていたことは何ですか?

理系に進みましたが、自分が研究者になるとは思っていませんでした。当時は飛行機に興味がありましたが、父の仕事の影響で生物にも興味を持ちました。部活は弓道部で、普通の高校生をしていました。

高校生のときにやってほしいことは何ですか?

何でも体験しようとする気持ちが大切です。新しいことに踏み入れるとき、できない、面倒くさいと思わず、それができるのはその瞬間だけだから、積極的に挑戦していってください。努力の分、かならず結果に出て来ます。

後は何でも楽しむことです。楽しまないと、モチベーションも出ないです。いやな勉強でも将来の自分をバージョンアップするときの材料になると思って楽しんだ方が良いと思います。

インタビューを終えて

私たちは廣島さんのされているような研究についてあまり知らず、インタビューはAIについての素朴な質問から始まりましたが、丁寧に説明や解説をしていただきました。先生の研究に対する姿勢、考え方などを聞き、また、私たちがこれまで見たこともなかった研究室の実験装置を実際にのぞかせてもらい、大変おもしろく、興奮しました。今から何でも体験するようにし、面倒くさいと思わず積極的に挑戦していこうと思います。そして、廣島さんのように粘り強く頑張っていこうと思いました。ありがとうございました。

取材・執筆

兵庫県立柏原高等学校 理科部
芦田翔太 芦田崚馬 森田あいり 山本哲也 西田朱里