最近の研究成果(2018年4月〜2019年2月)
2018年4月から2019年2月のプレスリリースと論文ニュースからご紹介します。
(トップ画像)青い林の中を通る赤い道? 実は…
これは「触覚」を生み出すための皮ふのヒミツ。毛のもとになる細胞(毛包幹細胞:青)から分泌されるタンパク質(緑)が、皮ふと神経ネットワーク(赤)を正しくつなぐことで、皮ふが力のセンサーとして働くのです。
◎画像提供:細胞外環境研究チーム
ゲノムDNA複製の真の姿を捉えた
平谷伊智朗チームリーダー、高橋沙央里基礎科学特別研究員、三浦尚研究員(発生エピジェネティクス研究チーム)らは、増殖中の細胞でゲノムDNAが倍加していく過程を網羅的に解析する「scRepli-seq法」を開発し、その様子を1細胞レベルで詳しく観察することに成功しました。
Takahashi S, Miura H, Shibata T, et al. Nat. Genet. 51(3). 529-540 (2019)
コンパクトなDNAをスムーズに転写する仕組み
関根俊一チームリーダー、江原晴彦研究員(転写制御構造生物学研究チーム)らは、真核細胞の遺伝子発現を担う「RNAポリメラーゼII(RNAPII)」が、ヒストンに巻きついたDNA(ヌクレオソームDNA)をスムーズにほどきながら塩基配列を読み取り、RNAに転写する仕組みを解明しました。
Ehara H, Kujirai T, Fujino Y, et al. Science 363(6428). 744-747 (2019)
世界最高分解能で全ゲノムの3次元構造を解明
大野(城村)雅恵研究員と谷口雄一ユニットリーダー(細胞システム制御学研究ユニット)らは、ゲノムDNAの全領域にわたる3次元構造を、その最小構成単位であるヌクレオソームレベルの分解能で決定することに成功しました。
Ohno M, Ando T, Priest DG, et al. Cell 176(3). 520-534.e25 (2019)
性ホルモン産生酵素が個人の性格・気質に関連する
渡辺恭良チームリーダー、高橋佳代上級研究員(健康・病態科学研究チーム)らは、脳内で発現する女性ホルモン産生酵素アロマターゼの発現量がヒトの性格の個人差に関連することを、陽電子放射断層画像法(PET)による脳画像解析で明らかにしました。
Takahashi K, Hosoya T, Onoe K, et al. Sci Rep 8(1). 16841 (2018)
脊椎動物の半規管の進化
樋口真之輔研修生、倉谷滋チームリーダー(形態進化研究チーム)らは、顎(あご)を持たない脊椎動物であるヌタウナギとヤツメウナギの内耳の発生を解析し、単一の半規管から段階的に複雑に進化したと考えられてきた三つの半規管(三半規管)の構成要素の大部分が、すでに5億年以上前の共通祖先において獲得されていたことを明らかにしました。
Higuchi S, Sugahara F, Pascual-Anaya J, et al. Nature 565(7739). 347-350 (2019)
皮膚で触覚が生まれる仕組みの一端を解明
チュンチュン・チェン研究員、筒井仰研究員、藤原裕展チームリーダー(細胞外環境研究チーム)らは、マウス毛包の「表皮幹細胞」が触覚受容器の正常な機能に必須であることを突き止め、皮膚で触覚が生まれる仕組みの一端を解明しました(トップ画像)。
Cheng CC, Tsutsui K, Taguchi T, et al. Elife 7. e38883 (2018)
運動する細胞の進行方向を決める仕組みを解明
松岡里実研究員と上田昌宏チームリーダー(細胞シグナル動態研究チーム)は、運動する細胞の前後方向が決まる仕組みの一端を明らかにしました。
Matsuoka S, Ueda M. Nat Commun 9(1). 4481 (2018)
サメのゲノムを解読
工樂樹洋ユニットリーダー(分子配列比較解析ユニット)らは、世界で初めてサメ(イヌザメ・トラザメ・ジンベエザメ)の包括的な全ゲノム解析を行いました。
Hara Y, Yamaguchi K, Onimaru K, et al. Nat Ecol Evol 2(11). 1761-1771 (2018)
レム睡眠に必須な遺伝子を発見
上田泰己チームリーダー、丹羽康貴基礎科学特別研究員、神田元紀研究員、山田陸裕上級研究員(合成生物学研究チーム)らは、レム睡眠に必須なニつの遺伝子を発見し、レム睡眠がほぼなくなっても生存するマウスの作製に初めて成功しました。
Niwa Y, Kanda GN, Yamada RG, et al. Cell Rep 24(9). 2231-2247.e7 (2018)
太くて長い菅ができる仕組み
森本充チームリーダー、岸本圭史研究員(呼吸器形成研究チーム)らは、気管など管状の臓器が正しい形へと発生する仕組みをマウスで明らかにしました。
Kishimoto K, Tamura M, Nishita M, et al. Nat Commun 9(1). 2816 (2018)
非染色・非侵襲・短時間で細菌を判別する光技術
渡邉朋信チームリーダー、アルノ・ジェルモン研究員、市村垂生上級研究員(先端バイオイメージング研究チーム)らは、大腸菌にレーザー光を照射したときに散乱するラマン散乱光が、大腸菌が持つ薬剤耐性の違いによって異なる特徴を示すことを明らかにしました。
Germond A, Ichimura T, Horinouchi T, et al. Commun Biol 1. 85 (2018)
卵子の染色体を守る新たな仕組み
イ・ディン リサーチアソシエイトと北島智也チームリーダー(染色体分配研究チーム)らは、正しい染色体数を持つ卵子を生むために減数分裂の過程で働く新たな分子経路を発見しました。
Ding Y, Kaido M, Llano E, et al. Curr. Biol. 28(10). 1661-1669.e4 (2018)