気管の形成

運命が先か、かたちが先か、それが問題だ

2019年10月11日

発生という現象は、より複雑な形態を形成するように必ず一方向性に進みます。つまり一度できた形態が壊れないように維持する仕組みがあるはずです。
近藤武史特定助教(京都大学大学院生命科学研究科、元理研 基礎科学特別研究員)と林茂生チームリーダー(形態形成シグナル研究チーム)は、ショウジョウバエ胚の気管前駆細胞が気管を形成する際には、一度形成した管状構造を維持して形態形成を進めるために、管状になった組織の形状に従ってtrachealess遺伝子の発現が維持されるポジティブフィードバック経路が働いていることを明らかにしました。 続きを読む

Kondo T, Hayashi S, eLife 8: e45145 (2019)


体内時計

マイクロ流体デバイスで生物組織を簡単に長期培養

2019年10月10日

集積バイオデバイス研究チームの田中陽チームリーダー、太田亘俊研究員、合成生物学研究チームの上田泰己チームリーダー、神田元紀研究員(研究当時)らはマイクロ流体デバイスを培養液透過膜と組み合わせることで、少量の培養液を自動的に灌流させ、生物組織切片を長期間培養することに成功しました。この方法によって、概日時計(体内時計)をつかさどる脳組織の一部を25日間にわたり培養し、2時間ごとの経時観察を行い、概日時計機能が全培養期間を通して、感度よく計測されることを実証しました。 続きを読む

Ota N, Kanda GN, Moriguchi H, et al. Anal Sci 35, 1141-1147 (2019)


自由エネルギー

酵素-阻害剤結合の初期会合体を予測

2019年9月6日

ほんの一瞬で分子が形を変えてしまう化学反応において、その瞬間を捉えることは通常の計測方法では困難です。
分子機能シミュレーション研究チームの杉田有治チームリーダー、李秀栄上級研究員らは、酵素活性を阻害する分子が酵素タンパク質に結合する際に生じる過渡的な結合状態や、そこから複数の準安定結合状態に至るまでの分子構造の変化を、分子動力学(MD)シミュレーションを用いて、詳細に予測しました。これによって結合初期に形成される過渡的結合体の形や相互作用がその後の反応の方向を制御していることを明らかにしました。 続きを読む

Re S, Oshima H, Kasahara K, et al. Proc Natl Acad Sci USA 116, 18404-18409 (2019)


染色体の形は細胞分化と共にこう変わる

2019年8月13日

発生エピジェネティクス研究チームの三浦尚研究員、平谷伊智朗チームリーダーらは、マウスES細胞の分化に伴う染色体の三次元構造変化を調べ、トポロジカルドメイン(TAD)と呼ばれるDNAの塊を単位とする核内配置の変化が起こることを一細胞レベルで突き止めました。この核内配置の変化は染色体上のさまざまな領域で生じ、その領域の遺伝子発現の活性化とよく対応していました。しかも核内配置変化が遺伝子発現の活性化よりも先に起きることも分かりました。このことから、染色体の三次元構造変化を調べることで、将来の遺伝子発現変化を予測できる可能性があります。 続きを読む

Miura H, Takahashi S, Poonperm R, et al. Nat Genet (2019)


胚盤胞の分化を再現

2019年8月9日

いわゆる多能性幹細胞と呼ばれる細胞は胎児を作るすべての細胞に分化できますが、胎盤だけは作ることができないと考えられてきました。
しかし、網膜再生医療研究開発プロジェクトのコーディ・カイム基礎科学特別研究員らは、マウスの多能性幹細胞をいったん初期化した後に分化させることで、着床可能な胚盤胞様の構造を誘導することに成功しました(トップ画像)。この実験系は、受精卵などごく限られた細胞にのみ備わる分化全能性や、哺乳類の発生に必須な着床に関わる分子機構の解明に貢献すると期待されます。 続きを読む

Kime C, Kiyonari H, Ohtsuka S, et al. Stem Cell Reports (2019)


単一細胞からの超高感度メタボローム分析法を開発

2019年7月30日

一細胞質量分析研究チームの川井隆之研究員、集積バイオデバイス研究チームの太田亘俊研究員、田中陽チームリーダーらは、単一細胞という超微量の生体試料から代謝物を網羅的に計測する超高感度メタボローム分析法を開発しました。 続きを読む

Kawai T, Ota N, Okada K, et al. Anal Chem 91, 10564-10572 (2019)


細胞極性の形成

細胞が対称性を破る仕組み

2019年7月11日

体の中の多くの細胞には方向性(極性)があります。例えば、神経細胞は細胞体から一本の軸索を伸ばし、情報を細胞体から軸索の先端に向けて伝えます。また、免疫細胞のような丸い細胞も、活性化すると形を変えて極性を持つことが知られています。
非対称細胞分裂研究チームの河野夏鈴大学院生リサーチ・アソシエイト、松崎文雄チームリーダーらは、細胞極性の形成に働くタンパク質複合体によって細胞に非対称性が生じる際の基本的なプロセスを解明しました。 続きを読む

Kono K, Yoshiura S, Fujita I, et al. eLife 8 (2019)


ダム構造

泳ぐ一細胞の代謝を経時測定

2019年7月9日

有用な物質を作り出す微生物の中で起こっている化学反応を調べる時には、生きたまま長時間にわたって観察をする必要があります。しかし、ミドリムシのように活発に運動する微生物の場合、生きたまま動かないように固定することは簡単ではありません。
集積バイオデバイス研究チームの田中陽チームリーダー、太田亘俊研究員らは、ガラス製マイクロ流体チップに、泳ぐ微生物を捕捉しとどめるための「ダム構造」を持たせることで、泳ぐ微生物の単離と培養をマイクロ流路中で行い、複数の細胞の代謝物を一細胞ごとに経時測定することに成功しました。 続きを読む

Ota N, Yonamine Y, Asai T, et al. Anal Chem (2019)


ミミズで弁をつくる

2019年7月8日

集積バイオデバイス研究チームの田中陽チームリーダーらは、ミミズの筋肉組織を用いて、電気刺激によらずに、化学エネルギーだけで動作する小型の弁(バルブ)を開発しました。電力が供給されにくい体内に埋め込むタイプの機械を制御するための装置などへの応用が期待できます。 続きを読む

Tanaka Y, Funano SI, Noguchi Y, et al. Sci Rep 9, 8042 (2019)